「新品商売から中古商売をはじめた経営者」が陥りやすい罠

こんにちは。

グラムス株式会社CMOのHiroです。


私は「グラムスっぽくない記事を書いて欲しい」と言われているので、これまでの経験を活かして「リユースビジネスってぶっちゃけどうなの?」的な記事を連載していきたいと思っています。


中古業界あるある

皆さんが中古ビジネスを始めようとした時に、業界の諸先輩方に聞きに行ったり、ネットの様々な情報を調べたりしたと思います。


その時なんて言われましたか?


中古はバイヤー力(りょく)だ!相場観だ!

うちのバイヤーは優秀でこないだなんて(以下略


こんな話を延々と聞かされませんでしたか?


つまり


「値決め」「真贋」


これが中古ビジネスの難しい部分でありノウハウであり、キモなのは、先行者様のドヤ語りのおかげで皆さんもよく誤解されているかと存じます。


バイヤーの育成が追いつかないのでなかなか店舗展開できなくてなあ・・みたいな話もよく聞きますね。


バイヤー教育が急務!って言いながら、バイヤーが育つのには3年かかる!みたいな矛盾したお話をよく聞きませんか?せっかく育ったと思ったら「独立」しやがった!という嘆きもよく聞きますね


たしかに、それだけ有能なバイヤーさんなら「使われているより自分でやったほうが儲かる」ことくらいすぐ気づきますからね。


ですが、残念ながら現在ではいわゆる相場と言われる「いくらで売れるか」という情報はネットを調べればほとんどわかります。もちろんJANコードのないアパレルやバッグ小物などは調べるにはコツが入りますが、それでもテキストによるあいまい検索を使った巡回ツールや検索ツールを作ってしまえばほとんど自動的に、それこそ今日入社したバイトの女の子でも相場情報は短時間で調べることが出来ます。


売れる値段がわかれば変動費や固定費を計算して買取価格も自動的に決まります。もちろん買取価格も競合がたくさんいますので市場相場がありますから会社の都合だけでは決まりません。


現在ではブランドバッグや高級時計の真贋判定情報なども詳細なマニュアルなどがか容易に入手可能です。金の真贋についても専用の比重計や試金石などで体積の大きいインゴット以外はほぼ判定できます。(インゴットは比重がほとんど変わらないタングステンが入っていることがあるので場合によってX線をかけたり切断することもあります)



そういった意味ではいわゆる「バイヤー3年、真贋8年」みたいなものはだんだん化石化してきています。


そもそも有能なバイヤーって?


これは私が前職の時に実際にとある中古業の方に言われたことですが


「有能なバイヤーは演技もうまい。いかに安く買うかがノウハウだ」


自慢げにお話されてびっくりしました。


この幹部の思考はネットがなかった十数年前の時代で止まっているようでした。



今はネットが発達しています。メディアによる偏向報道や 厚化粧のブランディングや、ましてや演技によりその場しのぎのダマシが通用しない透明性の時代です。


店舗しかなかった時代で、「どこよりも高く買います」という「根拠不明の宣伝文句」が通用し、ネットスラングで言うところの情弱(情報弱者)から相場より安く買い叩いて「してやったり」が通用した時代はとっくに終わっています。


今それをしてしまうとすぐにネットで他店の買取価格がわかりますからしてやったりと思っていた顧客は事実を知った後に「あの店は詐欺的だ」とレッテルを貼り、家族や知人、一族郎党、いえ、それだけではありません。


そのヘイトスピーチはTwitterやFacebookにまで波及し「大ネガティブキャンペーン」となって瞬時に拡散され、見込み顧客までもが大量消滅し、ネットに不名誉な社名が永久に残り続けます。


私が考える「有能なバイヤー」はこのような悪役主演男優賞候補ではなく、「買取販売ともに相場に基づいた適正な値付けをし、たゆまなく作業を省力化し、手元の在庫で最大の利益を最小効率で出せる」バイヤーです。


あれ?これってバイヤーじゃなくても求められますね?


そうです。企業のバイヤーはマネージメントができる有能なリーダーであるべきです。


バイヤー力に固執するあまりに、その「暗黙知や経験値」を個人のスキルや名人芸に依存し、作業標準化して「企業の仕組み」にしてこなかった。


これが混迷する中古業界の一因です。


たしかに、一部の有能なバイヤーは名人芸に優れますが、いつか独立や転職で流出した時に経営者が自慢気に話していた「ノウハウ」もごっそり失います。


不幸なことに自ら「名人芸」と定義してしまっているので習得に時間がかかります。したがって後輩も育ちません。


人材ベースのビジネスはこうしてどんどん枯れていきます。


少し表現が辛口になってしまいましたが、私の真意は古い体質をディスることではありません。そろそろ目を覚ましてください!ということなのです。


皆さんが今まで聞いてきた「中古のノウハウはバイヤーと値付け」というのは必要条件ではあっても十分条件ではありません。昨今では説明したようにその必要条件すら怪しくなってきています。ですが誰もそんなことは教えてくれませんでした。


なぜなら私が知る限り中古ビジネスの「コア」を知る人物はかなり少数だからです。彼らは黙して語らず。これまであまり表に出ることはありませんでした。それをこれからお話します。


中古ビジネスの本当のコアとは??


実は「新品商売から中古商売に手を出した経営者」が陥りやすい罠があります。


それは売り先行、売上至上で商売をしてしまうことです。


中古の商売は仕入れがコントロールできません。買い取りしたものしか売れません。ロレックスがもう3本欲しいなーと思っても買取査定が成約しない限り売ることは出来ません。


なぜ売り先行にしたらいけないのか。


「例えば本来1000円で売れる商品を800円で売ろう」

「利益率のダウン分は回転率でカバーだ。」


この考え方は在庫の補充が効く新品商売でしか成り立ちません。中古は手元在庫が有限です。同じ中古でも本やCDのように同じタイトルがいくつもダブっているカテゴリーの場合は別ですが、基本的に一点ものの集合体が中古商売です。


つまり利益率がダウンした分を回転率で補うということは基本的に不可能です。


なぜなら補充が効かない中古ビジネスでは「買った量よりも売れる足が早ければ在庫が枯れてくる」からです。


中古は買い取らないと続かないのです。販売加速した後は販売失速が待っています。


中古ビジネスのコアは「買った量に応じた販売量を緻密にコントロールし、期待利益を最大化する」ことにあります。


もう少し詳細にご説明すると


買取量と総在庫(総タイトル数)を極力一定に保つように販売数(スループット)を価格等で調整する。

という話になります。


実際にはもう少し複雑なのですが・・(笑

図1:中古ビジネスのスループット概念図


温泉を想像してください。


汲み上げる揚水量は一定もしくは季節等で波があります。


お風呂は常に満水にしなればならない。


衛生さを保つために一定量排水させる必要がある。


揚水量=買取

お風呂のお水=在庫

排水=販売


です。

揚水量は基本的にアンコントローラブルです。蛇口を閉めることは出来ますが一定以上増やすことは出来ません。


お湯が半分しか入ってないけち臭い温泉なんて魅力も半減ですよね(笑

古いお湯で澱んでる温泉なんて誰も行きません。


すなわち適正な排水量が求められます。


皆さんが上記条件の温泉宿の主人だったらどうやって温泉の量を調整しますか?

入ってくるお湯の量に合わせて排水量を決めますよね?


中古ビジネスはまさにこの温泉と同じなのです。


買取量は自然現象に近いので一定もしくはアンコントローラブル

※広告をかければたくさん買える!というツッコミはなしでお願いします。たしかに一理ありますがその場合、獲得コスト(CPA)が成り立っているかは別の話です。 広告をかけてたくさん買えても結局手元に残るお金が少なくなってしまったら本末転倒です。


温泉は常に新鮮なお湯(在庫)で満たしておく必要があります。


つまり、排水量(販売)のみがコントロール要素です。

たまにはお風呂の底を抜くこともありましょうが(デッドストック処分)基本的には販売量で在庫鮮度も維持をしていくのがメインストリームです。


在庫量(タイトル数)も大切

長くなるのでまた別の記事で説明しますが中古は実は「在庫数」と売上が高い因果関係にあります。・・・と言っても商品あたりの在庫量ではなくて、セレクション(品揃え)のほうですが。


つまり、販売加速によって全体のセレクション数が落ちることで売上が失速するんです。


これを知らずに「最近売上が・・」と悩んでる方が多いんです。

こちらについてはまた別の記事で説明します。


話を戻します。


中古商売は「一定期間で本来得られる利益」をなるべく正確に推し量って値決めをしていく繊細なビジネスなのです。また相場は市場の在庫量で常に変動しますのであくまでも相場は今の相場で来週同じ値段で販売できるとは限りません。

中古は利益率は高いのですが、現金が先に出ていくので資金繰りが大変なのと買ったものがすべて売れるわけではないので、廃棄分(商品化率)も含めた利益率を設定しないといけません。

ややこしくなってきましたね。

ここで一度まとめますと。

買取価格

販売価格

回転率

在庫の鮮度

商品化率

総出品数(セレクション数)

etc

これらの数字を分析して水道の蛇口を調整するように価格で販売量を調整し、「全体のバランスを取っていく」ことが中古商売の真髄です。

中古はバランスなのです。

高速道路で例えるならば、皆さんがルールを守って一定の間隔で流れていれば問題はありませんが、誰かが急ブレーキを踏んだり、特定のインター出口で詰まったり、車線をはみ出したり、一台が猛スピードで飛ばしたりすることで大渋滞が発生したりします。

買取が10個しかないなら販売も最大で10個なのです。

実際には

10個買ったら2個は売り物にならなくて、8個販売し、結果6個売れて2個は捨て値で処分

ただし買取量を見据えながら総セレクション数は維持していく。

みたいなことをバランスを取りながら延々とやっていく必要があります。

次回以降、それそれの数字の見方についてより深く説明していこうかなと思います。

はい。中古商売は見た目と違ってちゃんとやろうとするとめっちゃややこしいのです。

ややこしいからおもしろんですけどね。

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