「第二回 新品商売から中古商売をはじめた経営者」が陥りやすい罠

こんにちは。グラムスCMOHiroです。

前回の記事は一部の界隈でHOTな反響を呼んでしまったみたいで少しビビっていますが、元同業の知人からも励まされたので「なるべく強い表現を使わずにマイルドな表現を心がけよう」という中学校の担任から言われた言葉を思い出しながらなんとか続けていきたいと思います。


歴戦の先輩方からすると「理屈はわかったけど具体的にはどうゆうことなんだ」というお叱りを受けそうですが、今回もマインド的な内容を引き続きご説明しつつ、後半に少し具体的な内容に触れていきたいと思います。



なぜ品揃え(セレクション)が大切なのか

前回の記事で「中古の売上は品揃えと強い因果関係にある」とご説明しました。ただし、これは中古ビジネスに携わっていらっしゃる方は誰でも理解していることだと思います。「在庫が多いほうが売上も上がる」という肌感覚は誰でもお持ちです。


ただ、日々業務に追われてわーっと仕入れてわーっと売っているとなかなか気づかないことがあります。


私は、新品の流通業界から中古業界に入った時に最初に言われたことがありました。


「新品の常識は中古の非常識です」


最初はその意味がよくわかっていませんでした。いやむしろ「商売なんて皆同じ。商売の基本をきっちりやれば売上は上がるはず」と思っていました。


その時は年間計画に基づいた月次の売上計画書にもとづいて事業部を運営していたのですが、あるとき、月の中頃で「このままだと月次の数字が未達成になりそうだ」と思った時がありました。


部下に相談したところ「商品選定は僕達がやりますから少し値下げをして販売加速しましょうか」と提案を受け「おうよろしく頼むよ!」とGOサインを出しました。


彼らの成果は目をみはるものでした。翌日から売上は挽回し月末には計画数値の103%という結果となり、僕は部下たちを労いつつも意気揚々と月次会議で成果を発表しました。


翌月。またしても売上が低迷してきました。僕は「ちょっとアクセル踏んでくれ」と部下たちに指示を出し、価格化するカテゴリーなどを選定した上で「粗利を傷めないように」メリハリを付けた値下げをしたつもりでした。


翌月も売上は達成しました。


さらに翌月。いままでで最高に低迷したのです。計画に対してマイナス20%を下回るペースでした。僕は当時どうしたらいいかわからず社長に相談しました。


社長は一言「言っただろ。新品の常識は中古の非常識なんだ」


と静かに僕にいいました。


「もう売らんでええ。値下げは中止しろ」


そういったのです。ここでしっかり書いておきたいのですがこの社長。非常に数字にシビアな方で、計画数値の未達を起こそうものならその後関係者を集めて何時間でも対策会議コースという方です。その方が「売上は未達成でいい」と言ったのです。僕は何を言っているかわかりませんでした。


僕「売上はいいってどうゆうことですか?」

社長「粗利が落ちるからだ」

僕「粗利が落ちる?率のことを言っているのですか?それなら額でカバーするだけの回転率は出しています」

社長「その考えがダメなんだ。」

僕「???」

社長「いま在庫はいくつある?カテゴリー別の総在庫数と商品種数を報告しろ」

僕「わかりました」


僕はこの時点でも何を言っているのかわかりませんでした。データの集計を部下に指示し、すぐにその結果はみてボクは愕然としました。


「在庫が前月比で10%も減っている。しかも高価買取帯の商材が30%も減っている・・」


すぐに社長に報告をしました。社長は数字を一瞥しただけで「すべてわかっていた」と言わんばかりにボクに言いました。


「いいか。中古の売上は買取についてくるんだ。これが何を意味するかわかるか?」


「つまり買取を強化しろということですか?」


「そうではない。【買取に合わせろ】と言っているんだ」


「買取に【合わせる??】」


「そうだ。お前は前月売上を達成したと言っていたがそれはなぜかわかるか?」


「値下げをして回転を高めたからです」


「ちがう。お前は未来の売上を借金しただけだ」


「???」


「お前が前月に売ったものは本来今月売るべきものだったんだ。買取が増えない以上中古の世界ではそれを利益の先食いという」

「お前の考え方は新品なら正しい。だから言っただろう?中古の常識は新品に非常識だと」


その時やっと自分がした過ちに気づいたのです。売上を上げたかったら買取をまず増やす。順番が逆だったのです。なるべくならCPAが悪化する一時的な無理な広告などで増やすのではなく恒久的策を講じ続けていく。その「買取量」に従って売上は作っていく。


お財布に例えるとわかりやすいと思います。出費の額が増やしたかったら貯金があれば貯金を切り崩すか、収入を増やすしかありません。それをしないのに浪費してしまえば手元のお金はどんどんなくなります。ボクがあの時したことは「貯金を切り崩しながらさらに身の丈を超えた浪費をするためにカードで買い物をしてしまった」これなのです。


そして、この時もう一つ学んだことがありました。


それは「値下げ」をして動く商品は元々注目度が高く、価格に敏感で競合も多い「価格」が唯一の差別化要因となる低粗利の人気商品だと言うこと。いわゆるロングテールの商材は競合度も低く、市場の在庫も少ないためユーザーもあまり価格を気にしておらず「ただの下げ損」となること。


結果的に無策なこの値下げが引き起こしたのは

・元々高回転低粗利の商品を価格化して「価格帯別(粗利別)売上シェア」をやみくもに高めてしまい、全体の粗利率が低下した。

・比較的ロングテールの商品まで値下げしてしまい、粗利率をさらに低下させた。

・買取量<販売量がという状態を2ヶ月維持したことにより、総在庫数、品揃え数が下がった。

・たしかに最初の二ヶ月は粗利の低下分を回転率でカバーしていたため大きな変動はなかったが3ヶ月めにリカバリーできないほどの粗利の低下が起こった。(先食いしただけだった)


中古のネット販売において(新品でも同じですが)品揃えが最も重要というのはビッグデータ解析において証明されているのですが残念ながらその証拠になるデータは守秘義務の関係でここでは出すことは出来ませんが、ざっくりと以下の意味合いがあります。


1.ユーザーが増え、ユーザーとの接触確率が増える

2.中古では実現しにくいクロスセル、アップセルが実現し客単価が増える

3.顧客経験価値(ユーザーエクスペリエンス)が高まり来店頻度が増える

4.売ったものが再度買取に持ち込まれる可能性が増す(エコシステム化)

※こちらは検索精度も関わってきますので闇雲に品揃え「だけ」増えてもいけないのですが。


とくに「3」か顧客生涯価値を高めるために大変重要です。

品揃えの維持=ユーザーエクスペリエンスの維持と心得ましょう。

そして、品揃えが落ち、売り上げも落ちると今度は買取にも影響が出てきます。

中古ビジネスは

買取→販売と考えがちですが本来は

買取→販売→買取のループを作っていくことです。

これを買取エコシステム(生態系)と言います。総買い取り件数の中の「一度自社で売ったものが戻ってきた率」をKPIにしている企業はあまりいないと思いますが、このKPIの推移を追うことで自社がどんな買取プロモーションをしているのか、顧客生涯価値を高めているのかを測る非常に重要な指標となりますのでぜひ導入を検討してみてください。



閑話休題


昔何かで読んだのですが「値下げという行為はバカでもできる。だから値下げをするとバカがどんどん真似をして参入しお互い頓死する」と言うものがあります。あの時のボクはまさにバカそのものでした。これが、「値下げ=売上達成のため」ではなく「値下げ=スループットの調整弁」に考えが変わった出来事でした。





スループットという考え方の大切さ

スループットという言葉はおそらくボクがこの業界で独自に使っている単語なので馴染みがないと思います。簡単に言うと売上から買取価格(原価)と買取~販売に関わる変動費を引いた限界利益のことです。


ここで言う変動費の内訳はおおよそ以下の様なものです。


買取に関わる送料やダンボール、梱包材などの資材費

査定~出荷のスタッフ人件費(社員人件費は固定費)

販売手数料(カード手数料や出品手数料など)

出荷送料


これらの費用をまとめて「材料費」と言っています。なぜ「材料費」なのかはちょっと言葉の定義が難しいかもしれませんが、「売上(買取)とともに増えるお金」はすべて材料費とします。


中古のビジネスの営業部門はこのスループット(売上ー材料費)を高め、管理部門では固定費を減らすことが大切です。


こうすることによって以下のような部分最適、例えば

・ラインの生産性を高める

・スタッフの手空きが出ないように作業をどんどん割り振る

のような行為が「無駄な在庫をいたずらに増やす」だけであり、スループットは変わらないということはおわかりでしょうか?


売上   1000万円

仕入原価 500万円

材料費  300万円

だったとします。この場合のスループット(限界利益)は


1000-500ー300=200万円です。


生産性が仮に20%高まったとしても、高まった分、スタッフをクビにしない限り上で言う材料費は変わりませんね?査定の生産性が上がって売上が上がりますか?上がりませんね?したがってスループットは変わりません。


変わらないどころか無駄な在庫が増えることによりボトルネックが発生します。


単位時間あたりの処理数の例

査定  100

ささげ 100

入庫  100

出庫  100

※ささげ・・撮影採寸原稿のいわゆる販売前に必要な作業の頭文字をとった言葉


仮にこのようなバランスの取れたラインがあったとします。

査定のラインが20%生産性が上がったとします。


査定  120

ささげ 100

入庫  100

出庫  100


ところがささげのラインは100のままですから何が起こるかというと


査定  120

      >仕掛り滞留在庫20

ささげ 100

入庫  100

出庫  100


こうなるわけです。結果的にスループットは何一つ変わらないどころか、在庫の管理費用が増えますので結果的にはスループットは下がります。


仕入れコストの高い中古において、スループットを高めるには並大抵ではありません。買取は一定、売上は買取の準ずるため同じく一定。仮に買取が増えても材料費つまり変動費率は一定と思いがちですが、中古において一時的な買取急増によるラインの乱れは増員で対応しにくい「査定」がボトルネックになりそのまま全体の遅延になることが多くあります。


なぜなら先程の例のように全体の処理量はボトルネックの処理量が上限だからです。


このように、中古のビジネスにおいてはスループットを高めるために全体最適でバランスさせるというのがまずは最優先事項となります。


今ある在庫で

今ある人員で

いまできる売上利益


この最大化をきちんとオペレーションすることがまず第一。

次に、やることは


各工程のボトルネックの解消

査定~出庫までのリードタイムの短縮

適切な廃棄や処分による在庫鮮度のコントロール


この処理数に応じた


買取計画と販売計画


この順番なのです。



長くなりましたので今回はこの辺で!






















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