「第三回 新品商売から中古商売をはじめた経営者」が陥りやすい罠

こんにちは。

先日某大手ネット通販企業の社長様にご挨拶に伺った際に、挨拶一番


「意見の違う部分もあるがスタッフ全員に読めと指示した。」


とおっしゃられて変な汗が止まらなかったCMOのHiroです。


ひぃ・・なんかすみません・・(震え声)



このシリーズは僕の経験とある程度の成功体験を元に構成されています。自分がグラムス入社前に、グロースハッカー兼コンサルタントとして様々な企業のお手伝いをさせていただいた際に心がけていたことは「ビジネスに必勝法なんてない」ということです。一定の手順を踏めば誰でもエンディングを見れるRPGゲームのようなノウハウなんてありません。現実はファミコン時代に一石を投じた「たけしの挑戦状」のようにまったくもってクソゲーであり、理不尽極まりないものです。


必勝法なんてないわけですから「自分の経験知識」などというものは「ないよりはちょっとマシ。」「成功体験はたまに悪さもする。」程度の認識で取り組んでいました。


必要なのはアンテナ感度(情報)、スモールスタート(実行)、データアナリティクス(仮説検証)のサイクルを武器に臨機応変にゴールを目指すこと。


臨機応変とは辞書によると


状況に応じた行動をとること。場合によって、その対応を変えること


となっています。変化を受け入れ、常に変化すること。成功体験は時にこの行動を阻害します。


ボクはこのブログで自分の経験を語りますが、「必勝法」だと思っていません。1フレーズでも「お。いいなこれ」って思ってもらったら幸いだと思っています。


よし。うまく言い訳できました。では本題に入りましょう(笑)


価格設定について


中古をはじめた人が最初に躓くのが価格設定です。価格設定は個人商店でも大企業でも考え方は同じなのですが、けっこうここは「オレのノウハウ」的なものが尊重されてまして大手コンサルファームやら大先生がもっとももったいぶる内容です。


もちろん、商材によっても大きく違いますし、現在のクライアント様の手前もありますので全公開というわけにはいかないのですが、特に誰かに遠慮する必要もない「美少女フィギュア商材」の値付けについて今日は書いてみたいと思います。


問題です。


販売主戦場のAmazon中古最安値が9,000円のフィギュアがありました。


あなたはいくらで買いますか?


・粗利率を掛ける

・オレのノウハウがある(だいたい聞くとエクセル計算式)

・ブランド品ならわかるけどフィギュアはちょっとわかんない


どれかでしょうか?


前回、「お前は前置きが長いんだよ」って突っ込まれましたので(笑)


今回はもったいぶりませんよ。


以下のように算出します。


過去データより以下のデータを引っ張り出します。

※BIツールでJANを打てばすぐ表示できるようにしておきます。


・商品ランク別販売価格(過去半年・過去5回など)

・商品ランク別買取価格(同上)

・現在庫数

・Amazon出品数

・Amazon上位10位までの順位別出品価格、セラー、品質情報

・平均在庫回転期間

・初期価格からの値下げ率

・値入率と粗利率

・評価損

・トレンド係数

・危険率

・安全在庫量

・在庫アイテム数(SKU別・カテゴリ別など)


脚注

※評価損・・初期設定価格と最終販売価格の粗利の差を取ります。 値入ー粗利です。

評価損が安定しない、大きい場合は初期設定価格の精度に問題がありますので価格オペレーションの見直しを検討します。


※トレンド係数

過去の販売実績がある商材であればトレンド値を求めます。商品単品ではなかなかデータが揃わないのでフィギュアの場合は「コンテンツ・キャラクター別トレンド値」を用います。トレンド値には「確定トレンド係数」と「確率トレンド係数」があります。確定トレンド係数とは簡単に説明するとこれから時系列で人気や需要が更に高まっていく(下がっていく)コンテンツやキャラクターを回帰分析して係数化したものです。確率的トレンド値とは確率的に同じような変化する量を求めたものです。ちなみに「季節係数」とは違います。季節係数は1年毎に周期的に変化しますがトレンド値は年とは関係なく上下する傾向値です。

トレンド値とはTVや映画の影響で需要がスパイクすることはありますがさすがにそれは読めませんのでここでは考慮しません。


※危険率

このロジックが誤りである確率を設定します。通常5%です。誤解を恐れずに言うと100回計算したら5回は間違えることがあるということです。なぜ危険率を設定するのかは、あるものが正規分布に従って平均m、標準偏差σで分布している場合、約95%のものはm±2σの範囲に収まります。ということなのですが、統計的なお話になりますので割愛します。


※安全在庫量

買い取り出現率から品切れしない安全在庫量を求めます。説明は割愛しますので気になった方は以下のリンク先を参考にしてください。




これらの数値を統計的に処理して

Amazonの掲載順位(初期は安い価格順)の何位に価格を設定した場合に3週間以内(期間は商品によって可変します)で販売する確率がもっとも高い価格を算出します。


たぶんですね。


は?


って思われたと思います(笑)


そこまで必要なの?


という部分も含めて、ボクはデータサイエンティストかぶれだったので「(大学研究室を除いて)世界で一番中古価格をややこしく計算していた男」である自負があります(笑)


もう、ヲタクの世界ですね。


オタクグッズを分析オタクが買い取っていたというオチです。


上記の計算で「すべてが集約された販売価格」が決まりましたら基礎値入率と商品ランク別係数(簡単に言うとプレミア度)をかけ合わせて買取価格を計算します。ただし、これも「競合の買取価格」との見合いになるのは言うまでもありません。


ボクはコレを「中古数理モデル」と呼んで品種ごとに体系化していました。


よく「オレは数学得意だったんだ。計算式にして見せてくれ」と言われるのですが


「集合や微積分やベクトル行列や確率の数式見てもどうせ理解できないくせに・・」って内心思いながら笑顔でお出ししていました。


「あ・・、お・・おう・・ややこしいことしてるな」


みたいにスルーされますけどね。




実際、これらは専用のBIツールで今流行りの「人工知能」の前身であるニューラルネットワークなどを使って演算します。一晩かかることも普通なので退社前に実行して次の日出社したら計算終わってるみたいなルーチンでした。




ポイントは以下になります。


・単純に粗利率だけ見るのではなく評価損(見込みと実績の違い)を意識し常にオペレーションと計算式をチューニングに役立てよう。

・コンテンツには鮮度があります。ダウントレンドなのかアップトレンドなのか考慮し、在庫切れや過剰在庫を防止しよう。

買い取り量に合わせてなるべく在庫切れしないように売っていこう。

・手元の在庫で最も粗利額を稼げる売価設定を統計的に設定しよう。やみくもに最安値にすればいいってもんじゃないはず!

・勘と呼ばれる人間の暗黙知・経験知をなるべく数式に落として定量的に評価、改善しよう!

・個人の名人芸を会社の資産(数式・ロジックに落とす)にしよう。



まとめ


ボクは学者や評論家ではなく実務家です。「机上の空論」はビジネスの現場において一番無駄なものです。会議室で「こうしたらいいんじゃないか?」と言っている間に「すでにやってる」奴が世の中にはゴマンといるということをよく知っています。ボクは過去在社中ほとんど会議に参加していませんでした、議論する間に上に書いたようなことをぱっぱっとやって、結果を実績と突き合わせていました。軽はずみに初めて、冷静沈着に評価する。この繰り返しです。


もちろん、企業はアカデミックな研究の場ではないので「当たった外れた」ではなく、「結果的にそれでいくら利益が出たのか」を指標にすることは言うまでもないです。70点の精度しか出なくてもそれを実装することで利益が増えるなら実装します。



年内の更新は何らかの圧力がない限りこれが最後の予定です。


少し早いですが、皆様良いお年を!















ZenFotomatic Blog

全自動画像加工クラウドサービスZenFotomaticを運営するグラムス株式会社公式ブログです。

0コメント

  • 1000 / 1000